(図1)
従来の白内障手術は、術者が角膜や水晶体に術者の手で切開を加えていきます。そのためどんなに熟練した術者でも、切開創や水晶体に開ける穴の大きさや形に多少のばらつきは避けられません。
フェムトセカンドレーザーは、フェムト秒(1 フェムト秒は 1000 分の 1秒)単位の赤外線レーザー光を連続照射することで、照射部位を光切断します。(図1)
このレーザーは眼科領域ではこれまでにレーシックなどの屈折矯正手術に用いられておりましたが、最近になり角膜手術に加えて白内障手術にも応用されるようになりました。
フェムトセカンドレーザー白内障手術装置は、従来は術者の手で行われていた切開創の作成、水晶体の殻に穴を開ける工程を、レーザーを用いて事前に設定した大きさで正確な位置に行うことができます。これらによって正しい位置に眼内レンズを固定することができ、眼内レンズの機能を最大限に発揮することが可能となります。(図2, 図3)
また、レーザーによって水晶体内の硬い組織(核)を細かく分割することによって、超音波白内障手術装置の使用を最小限に減らすことができ、眼への負担を減らすことが可能です。さらに、角膜の乱視を減らすための切開も行うことができます。これらをコンピューター制御下で安全かつ精密に、計画通りに手術を行うことができます。
近年、多焦点眼内レンズや乱視矯正眼内レンズなどの付加価値のついた眼内レンズが使用可能になりました。これらの眼内レンズの機能を最大限発揮するためには、水晶体嚢の前面に開ける穴が直径5.5mm の正円で、水晶体嚢の中心に作成されている必要があります。このような高度な精度を必要とするときには、人間の技術よりコンピューター制御下で緻密に行うレーザー治療が優れています。
本術式は 2008 年にヨーロッパで初めて行われ、その後世界中に広まっていき、現在では50か国以上で行われており、今後さらに普及していくことが予想されています。